風の森通信 第312号
一涼を誘うおもてなし
仙台は朝から小雨が降り続きました。
傘を傾けて空を見上げれば、雲の向こうが少し明るくなっていて、その雲に隠れているであろう夏の気配を感じることができます。
今日は仙台市在住のT先生のお宅に伺いました。
待合床 賓主互換
主と客が各々の立場に徹するのではなく、それぞれの存在を認めあい、互いに思いやる心により進められていくお茶会をと。
それぞれが尊敬しあい、感謝しあうことでもあろうか。
私のような初心者にも、このように迎えていただける有難さ。
「どうぞお召し上がりを」
カクテルグラスに入っていたのは、桜の花と氷が浮かぶ桜清水。
冷やされた桜清水は初めていただくおもてなし。
涼しげなそのグラスに私の目は釘付けです。
床 清流無間断
花 鉄線、破れ傘、白水引
水は絶えることなく流れてこそ清流。
そして水は全ての生命の源。
清らかな流れこそ、清らかな心を育てることができるのでしょう。
小振りな鉄線の色の鮮やかさが、お茶室の空間に涼しさを誘ってくれます。
初炭手前、濃茶手前そして薄茶点前。
下写真左側、縁が青い色のガラスの器は朝顔の花。
注がれたのはブランデー梅酒。
朝顔の露を、お客様にのんでいただこうという先生のおもてなし。
いただいた梅酒には朝顔の淡い青色がついていたような気がします。
小吸物椀にはそうめん、茗荷と卵が入っていい香りです。
肴は鮎の風干と空豆。
全て先生の手によるもの。
お酒が入った器には海棠の葉が置かれています。
その口先は鋭く、露が光りながら滴るには十分です。
白色の器に海棠の葉の緑と茎の赤い色が映え、そして息づいておりました。
お茶室にあるお道具は、それぞれ梅雨の季節の表情です。
たくさんのおもてなしをいただきながら、自分自身の感性を高めそして清めることができたのです。
今日の茶会のテーマは「清心は礼和す」でしょうか。
こうして梅雨の季節と向き会い、今日という日を思う存分満喫することができました。
なかなか得難い時間と空間、そしてT先生とお道具との出会い。
時間はあっという間に過ぎていきました。
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