風の森通信 第385号
「花」
日本で「花」といえば桜のこと。
花の歌人といえばやはり西行であろうか。
西行の作品は約二千首あるといわれ、その中でも多いのが旅の歌、月の歌そして花の歌が数多く残されています。
花の歌の中でも私が好きなのはこの三首です。
尋ねとも風のつてにもきかじかし花と散りにし君が行方を
春風の花を散らすと見る夢はさめても胸のさわぐなりけり
願はくは花の下にて春死なんそのきさらぎの望月の頃
歌の解説がなくても、その趣や心情が現代の私たちにもストレートに伝わってきます。技巧的ではなく分かりやすいということでしょうか。九百年も前の歌を思い出しながら私もお花見といたしましょう。
先月の末頃から花便りが聞かれてからはやいもので三週間が過ぎ、ようやく仙台では昨日満開です。それでもここ数日寒い日が続いていて、これが花冷えというのでしょうか。
近くのお茶屋さんから花見団子を買い、温かいお茶も一緒に準備して出発です。
花曇りの中、私が住む泉区パークタウン内にある寺岡の桜通りには、車が道路脇にいっぱい停まっていて多くの人でにぎわっています。下から見上げると咲いた花が連なって花の雲。しばらく歩いているとパラパラっと花の雨が降ってきました。
お花見の場所を変えようと車に乗り、今度はお隣の桂の公園脇の花をみようと花巡りです。その後は少し足を延ばして青葉区上杉公園の花、ついでに西公園の花も楽しんできました。
ベンチに腰をおろせば花疲れ、気だるい感じと美しい花をみたという充足感。
一週間という短い命の期間に、私たちの心をこれほどとらえる花は他にはありません。
咲き出した頃のあのもにゃもにゃとした様子、この満開のとき、そして風に吹かれ散るさまもそれぞれ美しいものです。
そして目を閉じれば花の下での思い出がいっばい過ぎります。
来週はちょっと遠出して、ただただ花を見てこようかと思っております。
さてさて、この号で「花」という言葉が何回出てきたでしょうか。
和の学校仙台分校へどうぞ