風の森通信 第782号
不思議なご縁
■平成23年12月29日 午後1時30分~
■山形県山形市
■席主 高内 宗睦 氏
山形の雪を見ると不思議なものであたたかく見えてきます。
でも蹲踞は既に雪の下に有って使うことはかないません。
待合の縁側から湯桶を使い手水の所作を行なうのは、雪国のお茶室ならではのものではないでしょうか。
露地に積もった雪の風情もまた格別なもの。
湯加減もほど良く、ご亭主の細やかな心遣いは誠にありがたいものです。
飯後の茶事というご案内をいただき席入させていただきました。
床 明道老師筆 無事千秋楽
大震災を経験しながらも、こうして一年をなんとか無事に過ごせたことはどんなに幸せなことか身にしみて感じております。
花 昭和の光
花入 蹲る(うずくまる) 水野哲 造
極寒のこの時期に咲き出し、風雪に耐えて咲く力強さが一入愛おしく感じられるものです。
香合 糸巻 源内窯
香 黒方(くろぼう)
高内先生のお茶室に伺うのは初めてのこと。
しかし数十年前、私が小学生の頃この同じ場所で習字のお稽古をしていたことをふと思い出したのです。
山形に嫁いできた高内宗睦先生はそのことについてはまったく知る由も無く、こうしてまた同じ場所で御茶をいただくことになろうとは予想だにしなかったこと。
お席に座りながら、先生のお父様やお母様そして私自身の幼かった姿を思い出させてもらうことができました。
本当に不思議なご縁でございます。
香合の糸巻がこうなることを暗示していたのでしょうか。
その糸に引き寄せられて席入させていただきましたこと、私にとって一生の思い出です。一本の糸が全てお席に向かい、輝きを増して現実のものとしてくれたことに感謝しております。
黒方の香りがお茶室を満たしてくれました。
これからもこの香りを聞く度に、高内先生のことを思い出すに違いありません。
待合には亡くなられた高内先生の作品が数点飾られていて、毎日書道展などで賞をいただいたものと教えていただきました。
先生の大きな作品「創魚飛」や、かなの作品を拝見したのは今回が初めてだったのです。
帰り際仏壇に手をあわせると「さっぱり字が上手になってはいないぞ」とお声がしたような気がいたします。
今日から出来るだけ筆を持つよう心がけます。
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