風の森通信 第2098号
「炎芸術」 秋号 No.131
現代の天目 手のひらにひろがる宇宙 (阿部出版)
六華窯岩井純先生の〝六華天目釉曜変茶碗〟と〝六華天目釉茶碗〟が「炎芸術」 秋号 No.131に掲載されましたのでご案内申し上げます。
曜変「天目茶碗」は世界に三椀しかなく、いづれも日本の「国宝」に指定されています。
近年、独自に曜変を研究しそれぞれのアプローチで「至宝」に挑戦している、現代作家14名の多種多様な作品が紹介されています。
ご覧頂ければ幸いです。 六華窯 岩井純
大学卒業時に恩師から「陶芸の道を進むなら、君に一つ宿題を出そう」と言われ、植物の花粉粒にある脂質ラメラ体の顕微鏡写真を見せてもらいました。油滴の美しい結晶で、その文様を陶器に映し出すことでした。以来、結晶釉を研究してきましたが、国宝の曜変天目との出会いがあり、写真で見たミクロの世界と重なり、碗内の小宇宙が人々を魅了し、存在感を醸し出す釉薬とはどうしたら作れるのかという疑問から天目に引きこまれていきました。
最初は曜変の文様を再現するという思いが強く、試行錯誤しましたが、焼成段階での窯内の雰囲気、胎土などの条件により、思わぬ発色と文様がでることが分かり、独自の天目を作ろうという気持ちに変わりました。焼成時に釉の成分に変化が現れる一度掛けの曜変文様とは性質を異にしますが、二度の施釉による施紋の灰釉ベースでの添加金属の調整、徐冷時の酸化と還元の微妙な組み合わせにより、褐色金彩や白色斑紋など新しい文様が現れ、窯名にちなんで<六華天目釉>と名付けました。これからも未知なる可能性を求めて、恩師との約束に応えられるような独自の天目結晶紋を創りたいと思います。