風の森通信 第369号
松の葉
松は千年の常磐木。
松の葉は一年中緑色を保つ樹木で、千年の歳月を経ても風雪に耐えその色を変えない堅固さから、永遠の生命力を象徴するものとされてきました。
冬の季節のお茶会などで、飛石や渡りを残し露地一面に赤葉となって落ちた葉を敷いて、お客様をお迎えすることがあるといわれています。
松の緑と敷松葉のコントラスト、常緑の景色そして枯れ果てた景色を一緒に目にすることができるのも、露地ならではの光景なのかもしれません。そんな美に対する先人たちの感性には驚かされるばかりです。
もとはといえば、苔が霜で痛まないようにと松葉が敷きつめられたものだと齋藤先生にお聞きしました。
そんな侘びた光景にはなかなか出会うことができません。
私が松のことに一番心惹かれるのは、枝にあっては青々とした葉は番(つがい)の葉、枯れて落ちた枯松葉であっても番の葉であるということ。
枯れて落ちたとしても番でちゃんと役目を果たしてくれます。
そんな仲のよい松葉たちが愛おしく思えてくるものです。
「松竹梅」
いろいろな意味でよく使われる言葉です。
冬の季節であっても松竹は緑を保ち、梅は花を咲かせてくれます。
昔から歳寒の三友としてよく床に飾られてきました。
竹の真っ直ぐな中にもある柔軟さや、梅の清楚で香り漂う品格さがあったとしても、松が持つ堅固さや永遠性の他に仲がよいという意味があるから、一番先に名が出てくるのだと私は信じています。
今日のお稽古は、大炉で丸卓(まるじょく)を使った後炭手前、濃茶点前そして薄茶点前。
「お棗(なつめ)のお形は」
「中棗松竹梅扇面蒔絵でございます」
「お塗りは」
「先代中村宗哲でございます」
松風颯々(しょうふうさつさつ)
さーっと吹き抜けていく松風の音
そして茶釜の湯のたぎる音。
いい時間がゆっくり流れていきました。
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