風の森通信 第490号
「南部曲り家」 佐々木賢光
先日友人宅に伺った時、一枚の絵との出会いがありました。
「南部曲り家」 佐々木賢光
約30年前、友人のお父様が手に入れたとお聞きしました。
大きなサイズのため飾る場所がなく、30年間布を 掛けられ置かれていたという。
友人が引越ししたのを機に飾ったのだ。
その絵は里山がすぐ背景にあり、夕暮れ時の南部曲り家の様子が描かれています。
右側が母屋で人が住むところ、そして左側が馬屋であろうか。
左手前にあるのが外風呂のようで煙突から煙が流れています。
家の前ではおばあさんが放し飼いの鶏と一緒に描かれていて、もう小屋に入れているところでしょうか。
前にきれいな水の川が流れ、道を挟んで野菜を洗うところもあります。
佐々木賢光(けんこう)の魅力は、岩手の自然とそこに住む人々の生活を描いているところにあります。特に色合いと描かれた線に作者の心が表現されています。
昔からあった日本の原風景は、現代社会に生きる私たちへの贈り物。 現実の空間から解き放たれた気持ちにさせるのが、この絵のもう一つの魅力なのかもしれません。
かたくなに岩手山と南部曲り家しか描かなかった佐々木賢光。
彼の独特の個性と誇りがこの絵の中に存在しています。
壁から絵を外して見せてもらいました。
サイズはF50、描いた場所の住所が書いてあります。
「岩手県紫波郡都南村里前18-57」
描いた住所まで詳細に書いてある絵画を拝見するのは初めてです。キャンバスも細部にわたり丁寧に描かれているのが分かります。
最近では南部曲り家を見る機会がなくなってきました。
私が見たのは以前勤務地が岩手県宮古市にいた頃、遠野を車で通ったとき何軒かの南部曲り家を見ただけです。
この絵に描かれた南部曲り家はまだ残っているでしょうか。
地番まで分かっているので一度訪ねてみたいものです。
友人が絵を初めて洋間に飾ったときのエピソードを語ってくれました。
> 昨日マンションの洋間に飾りました。
>丁寧に描かれていて素晴らしい絵に初めて見入りました。
>飾ったその夜、真夜中にざわめきで眠りから覚めました。
>すると足元を右から左へ風のような ものが通りました。
>朝、風を感じた足元を見ると絵のある場所から吹いてきたとしか思えません。
>もしかしたら座敷童子(ざしきわらし)かな?
>絵は飾られて喜んでいるように思います。
> 家に帰ってから絵に向かい「ただいま」といつも声をかけます。
>絵の中ではお風呂も焚いて、部屋では夕餉の仕度もしてあるのでしょう。
>おばあさんが「お帰り」と言ってくれそうです。
木々のざわめきや風の流れ、夕餉時の匂いまで伝わってくるような「南部曲り家」
この絵は、普段自分では感じ取れない考え方や感性を見る者に教えてくれているのかもしれません。
今日のお稽古は「仙遊之式」そして「平花月」
「仙遊之式」で私は半東の役。
廻り花で入れた花は白芍薬そして三寸菖蒲。
雨の日の薄暗い茶室の中で花たちは明るく輝いてくれました。
お香は伽羅が焚かれ、お茶室の中は妙なる香りに包まれ時の経つのを忘れてしまいます。
明日は輪王寺での月釜。
淡交会宮城支部のО先生が釜をかけられます。
朝8時受付前集合で、齋藤社中の皆様方と一緒に楽しんでまいります。
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