風の森通信 第579号
龍生派いけばな展
・2009年龍生派宮城支部いけばな展(後期)
・平成21年4月18日(土)~20日(月)
・仙台市青葉区さくら野百貨店仙台店
各地から花の便りに心弾むこの季節、龍生派宮城支部いけばな展が今年も開催されました。会場には古典華や生花そして自由花などを中心に力作が数多く展示され、日曜日ということもあってか多くのお客様で終日にぎわいました。
龍生派いけばな展の作品をみていつも感じるのは、「発想」させられるそんな作品が多いことでしょうか。花を見て発想する、花器を見て発想する、物から発想する、生活の中から発想し活け上げられているということを。
花以外に、普段目にするいろいろな素材が実に多く使われているということが、このいけばな展の大きな特徴のような気がいたします。
印象に残った作品をいくつかご紹介させていただきます。
■古典華 生花
・大槻秀峰先生
苔梅と小菊だけの作品です。
苔梅が空に向かって上へと伸びていくその曲線は、ここでしか見ることのできないものでしょう。みる者の心を引きつけ下の枝から最上部まで目が追いかけていきます。
小菊の白さはその中心にあって全体を引き締め、清々しささえ感じられます。そして品位、格調、調和という言葉すら感じさせてくれる作品でした。
■オープン
・菅野紫光先生
花材は縄、大王松そしてキングプロティア。
象の鼻が大王松を食べているように見えてまいります。
縄でぐるぐる巻きにされたその曲線が、まるで動いているかのようにも思えその大胆さに一瞬たじろいでしまうほど。
「大王」そして「キング」、どうもこのあたりに作品のテーマとしてのヒントが隠されているのでしょうか。それにしてもそれらを取り巻く全てが、縄で撒きつけられていることにも想像が膨らんできます。
縄自体も植物として扱っていると理解してもよいのでしょうか。
花器に入っている花といえば、私はお茶室でしか拝見する茶花だけですが、この花展を見る限りではいままでの固定概念ではまったく通用しないといっても過言ではありません。
多くの作品の中でも特に記憶に残る作品でございました。
■フレームにいける
・佐藤秋華先生
今回のテーマは「泡」
佐藤先生と会場で直接お会いすることができました。
仕事柄、日本種の酒蔵が大好きなこともあって、あのタンクの中の泡から発想したようです。
泡そのものは和紙で出来ていて、色は黒、金、紫そして白。蔵人さんの苦悩が黒。紫は神聖な神のお酒で御神酒蔵のイメージ、そして白はお米。金はその苦労に対するご褒美として全国清酒鑑評会で金賞受賞できますようにと願いを込めたとか。
泡が和紙で出来ているせいか一つ一つが優しく膨らんでまいります。唯一使ったしゃがの葉は、風が吹く田んぼの風景を表しているとお聞きしました。
佐藤先生の思いが、フレームという限られた空間の中にぎゅっと詰った作品でした。
今回のいけばな展をみて感じたことは作者も発想を膨らませながら活け、そして私たちも想像を大きく広げながら楽しむことができるそんな花展であったように思います。
来年もまた拝見したいものです。
なお受付において作品の写真撮影や掲載のご了解をいただきましたこと、この場をお借りし御礼申し上げます。
和の学校仙台分校へどうぞ
テーマ : 和風、和物、日本の伝統
ジャンル : 趣味・実用