風の森通信 第799号


 「第四回臥牛現代書道展」


■日時 平成二十四年三月十三日(火)~十八日(日)
■場所 仙台市青葉区一番町 
          仙建ビル一階 SENKENギャラリー
■主催 臥牛会(がぎゅうかい)

 臥牛現代書道展は私が毎年楽しみにしている書展です。
職場の熊谷先輩がいつも出展しているということもありますが、出展されている方々が常識にとらわれず、個々の独創性を大切にし新たな書美を追求しているところに魅力を感じています。

           「森羅萬象」 佐々木 祐一 氏

 森という太い字と、他の細い字とが関わりそして交わりながらできている作品は、現代社会のありとあらゆる事象がランダムに交差しているようにも見えてまいります。
一気に書き上げられた力強さも見逃すことはできません。


           「福壽草」 中島 緋紗絵 氏

 隷書風の書体は、その花の持つ明るさ、喜ぴそしてあたたかさや優しさまでもが見る者に伝わってきます。
「幸せ」を感じさせてくれる作品でした。


           「春夏秋冬」 熊谷 喜美雄 氏

 今回の書展に熊谷さんと一緒に作品を拝見させていただくことができました。出展された作品についていろいろとお話を伺うことができましたので、その感想などを皆様方にご紹介させていただきます。

「春夏秋冬そして俳句四句
自作文を書にするのが理想・・・とは、亡き白楊師の教えであった。
しかしその学才無く、今まで自作に挑戦しなかった。
昨春の東日本大震災で消滅した自家、町、郷を思えば妙に湧くように言葉や詩が湧き出てきて自然に筆を走らせてみました。
春の淡雪とともに消えた郷、珊瑚樹もまた枯れ。彼岸花に亡き人を見、一年が過ぎてきた。
自分ながら初めての詠唱にしてはまあまあであろうか。
強調すべきは、冬の候・落合直文(気仙沼市松崎生まれ)を引き合いに詠んだこと。彼が今の世にあったならば、かの惨状をどのような心情で見るのであろうかが句の趣意だった。
それを渚に漂い鳴く千鳥に重ね合わせ、より悲哀が増長できたように思います。
おそらく今回の詠句は最初で最後かも知れません」


            「松無古今色」熊谷 喜美雄 氏

 「松は、四季を通じ千載を経て変わることなく常に青々とした緑の葉を茂らせるという。
災禍によってその松でさえなぎ倒され自然は悉く壊されてしまった。それでもなお、一木一草自然の力の強大さに奮起させられたものだ。生きる希望をこの松に投影させたかったのです」


            「芝桜」 熊谷 喜美雄 氏

 「どこの家にもあるように、我が家にも少しばかりの植木や花々が咲く庭がありました。軒先一面に植栽した芝櫻もその一つ。
春、一面に咲くそれは、近所の人達からいつも褒められた。潮水をかぶっても、なお負けずに生きた芝櫻は、五月連休にも美しく花を咲かせてくれました。この後は絶えてしまって咲くことのない我が家の芝櫻。
迷いなく自然に出た文がこれです」

 熊谷喜美雄さんは、東日本大震災でご家族の皆様方は高台に逃れ一命をとりとめたとお聞きしました。家や家財そしてこれまで書き続けてきた数多くの作品が津波によって失ってしまいました。
千坪近くもあった農地は地盤沈下となり辺り一帯が海辺になってしまったといいます。
震災後は当然避難所暮らし、そしてその後の仮設住宅での生活の中からこれらの作品に取り組んでこられました。
これまで何度も無力感に襲われたとのこと。只管に書と向き合おうとしても、自分自身の境遇が哀れに思え何もかもがいやになったともいいます。そんな時はどこかへ逃げ出したくなったというが、それでも書は書き続けたかったとお話をお聞きした。その強い意志が残っていたからこそ一層焦燥感に煽られてしまったとお聞きしました。

 職場の仲間たちと一緒に書展会場を後にして、久しぶりに一番町の馴染みのお店に行って飲んできました。
そこでも熊谷さんからは「憂いに浸っていたままでは前に踏み出すことはできない。心定まらない日々が続くけれども、失意の中から得られた力を続けていきたい。そして失われたものに新たな光を与えこと、そして作り積み上げられたきた作品たちと向き合い往字の姿を取り戻し、出来ればより良い作品に仕上げていきたい。こうした願望もまた今の自分を支えているのかもしれない」とお話をいただきました。

 震災後既に一年を経過しました。
この間、熊谷さんが取り組んできた作品を観賞できるのは十八日までとなっております。是非多くの皆様方が書展会場に足を運んでいただければ幸いです。

 

和の学校仙台分校へどうぞ

コメントの投稿

非公開コメント

臥牛現代書道展の御盛会をお祈りして

素晴らしい作品の数々、鑑賞できて幸せです。
私も日本語の「言葉」による作品表現に魅せられている一人です。
やはりいつかは自分の中から湧き溢れる言葉を手繰り寄せたいと思っております。
熊谷さんは大変な思いをなさって・・・
それでも、それを創作に昇華なさる姿に感動いたしました。
ご紹介下さいましてありがとうございました。

柔らかな感性を持った方ですね。

そして文字もしなやかで美しいです。

この一年の様ざまな思いが文字ににじみ出ているようです。

くじけず負けず歩みますことを祈っております。

言葉による作品表現!

★谷川雫さま
 こんばんは。
書展会場には出展された皆様お一人お一人が、震災後の一年を振り返って自らの言葉で書き込まれている作品ばかりでした。
被害の大小はそれぞれとお聞きしましたが、心に刻まれた痛みは計り知れないものがあります。一字一字の言葉の重さが普段とはまったく違うように思へてなりませんでした。
先生方が書き続けることの意味を改めて思い、これからも多くの人々に先生方の作品を見ていただきたいものです。ブログではごく一部の作品しかご紹介できませんでしたが良かったと思っています。
 先程熊谷さんから書展会場へ多くの方々に足を運んでいただいたと御礼のメールが届きました。
来年の書展が今から楽しみでございます。
コメント感謝申し上げます。

書は人となりをあらわす。

★さちりんさま
 こんばんは。
書は人となりをあらわすとよく言われますが、自らが俳句を作りそして書も手がけられているわけですから、自分というものを全て一枚の半紙に向かい合い表現されているのだと思っています。
辛く悲しい思いをなされているにもかかわらず、こうして私たちに見せてくれる作品には心和ませてくれるものがあります。
熊谷さんのこれからにずっと応援してまいりたいと思います。
いつもコメント感謝申し上げます。
カレンダー
06 | 2017/07 | 08
- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31 - - - - -
プロフィール

 冨樫 通明  (仙台市在住 ・ ぎゃらりー風の森代表)

Author: 冨樫 通明 (仙台市在住 ・ ぎゃらりー風の森代表)
NPO法人和の学校会員、和の学校仙台分校会員。
茶道を中心とした「和の文化」の実践と普及・拡大に取り組んでいます。
昔からあった美しい東北の四季、それを彩る催しなどもお届けしていきます。

リンク
ブログ検索
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

FC2カウンター
QRコード
QR
いくつになったの?

天気予報

-天気予報コム- -FC2-
Powered By FC2ブログ

今すぐブログを作ろう!

Powered By FC2ブログ

カテゴリー
最近の記事
最近のコメント
月別アーカイブ