風の森通信 第944号
渾沌七竅 (コントンシチキョウ)
先日六華窯の岩井先生宅にお伺いした際、珍しいお茶碗でお茶をいただいてきました。
お茶碗は岩井先生が造られたもので、表面には「渾沌七竅」の文字が見えます。
以前東北大学S教授のゼミの名がこの「渾沌七竅」というもので、退官するにあたり記念にとお茶碗の制作依頼があったとその経緯を伺うことができました。そして「渾沌七竅」の意味もお聞きしてきましたのでご紹介させていただきます。
荘子の「応帝王」に「日鑿一竅、七日而渾沌死」という句が有ります。
南海にはシュクという帝、北海に忽(コツ)という帝、中央には渾沌(コントン)という帝有り。シュクと忽とは渾沌からの招きで出会い、渾沌は南北からきた彼らを温かく歓待したという。
ところで渾沌の顔には左右の眼と耳と鼻の穴がそれぞれ二つずつ、そして口が一つの合計七つの穴がまったく無くかった。物を見たり音を聞いたり、食べ物を食べたり呼吸をする器官が無かったわけである。そこでシュクと忽が話し合って、渾沌のおもてなしのお礼にと七つの穴をあけてあげようということになり、二人は一日に一つずつ穴をあけていった。しかし七日目に最後の穴をあけたところ渾沌は突然死んでしまったという。
本来もっていた容姿を余計なおせっかいによってぶち壊し、情報過多となってしまった渾沌は死んでしまうという寓話のようです。
人の「顔かたち」「心」そして「生死」の問題がつながっているということでしょうか。自然界についても同じようにいえるのかもしれません。
そういえば般若心経の中にも「無限耳鼻舌身意」 という一節に近いものを感じます。
ところでS教授のゼミの内容がどのようなものであったのかいつかお聞きしてみたいものです。
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